山口智也は1958年東京に生まれ、1985年に愛知県立芸術大学院研修科を修了。1990年からロンドンに移住し、イギリスと日本を中心に精力的に発表を続け、1995年には世界的に知名度の高いロンドンのリッソン・ギャラリーでのグループ展に選出されるなど国内外で高い評価を得ています。当ギャラリーでは2年ぶり4度目の発表となります。

山口の作品で最初に見る者の視線を捉えるのは、画面 全体を覆う緻密な「線」です。それらは、フリーハンドで描かれたような螺旋形であったり、また波紋のような無数の円弧 で構成されています。しかし、これらの「線」は実際は塗り残された部分の白い画布です。つまり、山口は画面 を縦横する繊細な「線」を描いているのではなく、「地」の部分を塗り込む作業によって「線」を形作っています。その精巧に塗り残された「線」は画面 上の「地」との関係によって、見る者の視点を撹乱し、その視覚的な装置で鑑賞者を彼の絵画空間に引き込みます。同時に、鑑賞者は絡み合う「線」を追い続けるうちに、実際に視線が捉えていたのは「虚の空間」であったという事に気付かされるのです。その特異な絵画空間は、手作業による描きの魅力と画面 のイリュージョンとの拮抗によって創りあげられていると言えるでしょう。

今回の個展では、山口が以前よりテーマとしてきた「過去・現在・未来の全ての時軸を内包する作品」のあり方をより強く示す手段として、これまでの「線」で構成されるシリーズの新作に加え、同じコンセプトを基本として発展させた新シリーズの作品も展示されます。

 

 

 

 

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吉本作次は1959年岐阜に生まれ、1984年に名古屋芸術大学を卒業。80年代前半から発表を始め、ニューペインティングの影響のもと、即興的な動きのある大胆なストロークを特徴とした抽象表現主義的絵画で高く評価されてきました。しかし現代絵画の欠落性とその可能性に疑問を持つに至り、90年に一旦制作活動を休止して古今東西の古美術、書跡、工芸などを観て回ります。その後、熟成期間を経て95年より新たに発表を再開しました。

吉本は山や雲といった風景や人物をときにリリカルに、ときにユーモラスに描いています。また心象を生き生きとしたストロークで描くこともあり、その表現方法のスタイルは多様です。
彼にとっての絵画とは、思考を造形の言葉に移し替えるためのものではなく、絵具や筆の痕跡によって画面 上に創りあげられたひとつの存在の醍醐味そのものです。それを最も有効に表現するために、彼はしばしば即興的な手法を用いて来ました。それは、絵具の魅力、筆の魅力として彼の個性が自然に表出される方法で作品を創り上げるための手段なのです。また一方で、即興的手法では表現できない計画的な構成を用いて、一見風景や人物として具象的に捉えられる形体の中に新たな抽象表現の可能性も探求しています。
抽象・具象といった様式にとらわれることなく、自らの絵画の表出の基盤を確と捉えて生み出される吉本の作品は、鑑賞者の感性の豊かさをおのずと導き出します。それこそが彼の絵画の魅力だと言えるでしょう。

当ギャラリーでの2年ぶり、4度目の発表となる今回の展覧会では、大作・小品を合わせ10点ほどの新作が展示されます。

 

 

 

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