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小川信治は1959年山口県生まれ、1983年に三重大学教育学部美術科を卒業し、現在は 名古屋を拠点に活動しています。
小川は伝統的な手法による油絵などの作品を数多く制作してきましたが、近年、従来の方法に加え、デジタル処理によるビデオ制作など新たな実験を試みています。そのひとつである「チェーン・ワールド」は、2000年春、愛知県の豊田市美術館での企画展「空き地」にて特別 プログラムとして初公開され、その後国内外で上映、好評を博しています。今回、当美術館での上映は、多くの要望に応え、今までにないロングランとなります。
古いヨーロッパの街並み。遠くに見える教会の塔に向かってカメラがズームアップしてゆきます。画面 いっぱいにその姿を捉えたのち、カメラはゆっくりとひき始めます。すると教会の塔だけはそのままに、周囲の風景は全く別 のものへと変化しています。さらに画面下の人影がズームアップされ、大きく映し出されます。再びカメラがひくと、またしてもその風景は一転しているのです。このようにして「チェーン・ワールド」は、23枚の古い絵葉書の風景をつぎつぎと繋いでいきます。風景の中のひとつの図像を介して視点の「より」と「ひき」がまるでゆりかごのように繰り返され、隣り合わせることのない別 々の世界を繋いでゆくのです。その映像体験は、私たちに絵画表現からは得ることの出来ない既視感、と旅にも似た不思議な感覚を与えてくれるでしょう。
私たちの心に眠る揺籃期の夢、そして小川が追い求める絵画的記憶の問題をスクリーンの表層に感じていただければ幸いです。協賛:学校法人河合塾学園・トライデントコンピュータ専門学校
協力:デジタルクリエイター研究科 (編集)安藤義則 (アニメーション)中神敬之